今日のひげ

FUKAIPRODUCE羽衣メンバー。俳優・高橋義和のブログです。現在はブログはほぼ休止中です。

落語の日

sekaihige2016-05-27

休み。
雨は午前中でやむが、風が強く冷える。


午後から、赤坂へ。
赤坂ACTシアタープロデュース「恒例 志の輔らくご」(@赤坂ACTシアター)を見る。聞く。

立川志の輔。ずっとCDで聞いてきたが、生で見るのは初めて。嬉しい。深井さんも前々から見てみたいと言っていたので、一緒に行く。
指定完売だったので立見をするつもりだったが、連れ合いが二人来れなくなったという人が声をかけてくれて、座って見ることができた。何の縁もゆかりもない我々に、なんと親切だ。しかもかなり良い席だ。表情、細かい所作まではっきり。甘えて、ありがたく座る。

前座さんお弟子さんが入る通常の独演会スタイルではなく、出演は志の輔さん一人のみの、言葉通りの独演会。
内容も異色。

【第一部】大忠臣蔵仮名手本忠臣蔵のすべて
【第二部】落語 中村仲蔵

第一部は落語ではなく、歌舞伎(初演は人形浄瑠璃だったと初めて知った)「仮名手本忠臣蔵」全十一段を、浮世絵をスライド投影しながらレーザーポインターを用いての解説。時々立ち上がっての実演も。
第二部で演じる「中村仲蔵」は、忠臣蔵の五段目のことをわかっている方が楽しめるから、という理由での構成。
この説明が、またわかりやすくて面白い。
しっかりとポイントを抑えつつ、飽きさせないよう、しかも話の理解に妨げがでないくらいに、ふざけたりくすぐりを入れてくる。
楽しくてためになる。

そして休憩挟んで第二部。
中村仲蔵、たっぷりと。落語の世界とこちらの世界を軽やかに行き来しながら。
ああ、落語というのはこういうことだなと心の底から思う。一人が座って喋るだけで、本当にいろんな景色や人が見える。落語、長く見てきたつもりだったが、今日、心の底からそう思った。
仲蔵演じる斧定九郎が花道をやってくる瞬間、噺の中の江戸の観客も、現在赤坂にいる観客も、確かに全員息を飲んでいた。

話が感動的だからとか、悲しいからとかではなく、自分の中で感情の処理ができなくなり、涙が出た。比喩ではなく、なんだかわからないが本当に泣いていた。久しぶりの感覚。


全三時間。
カーテンコールで志の輔さんから言われて、そんなに経っていたのかと初めて気づく。もっと聞いていたかった。

第一部最後に志の輔さんが言った言葉が印象的だった。ここまでは料金外、第二部からが料金内、落語でございます。と。
落語家としての矜恃と自信が見えた。そして、期待した以上のものを見せてくれた。

圧倒的だった。また、必ず見に行く。



劇場を出て、深井さんと興奮していろいろ話しつつ、ビールを飲みつつしばらく歩いて帰る。
晴れて風も止んでいた。